アクリル塗料は、1950年ごろから開発・製造が始まってから、発色のいい塗料として人気を集めてきました。しかし、アクリル塗料を外壁塗装に用いる場合は、その利点と懸念点を正しく把握しておくべきです。そこで今回は、アクリル塗料で外壁塗装をするメリット・デメリットや、他の塗料の特徴について解説します。
アクリル塗料のメリット
まずは、アクリル塗料を使用するメリットについて解説します。
塗装費用が安く済む
アクリル塗料で外壁塗装する費用は、おおよそ1,200〜1,800円/㎡であり、他の塗料に比べて比較的リーズナブルです。
とくに、店舗の外壁を数年ごとにリフレッシュしたい場合や、短期間で住宅を売却する予定がある場合はそのコストの低さがより魅力的に感じられます。家の売却を考えている場合には、塗装にかける費用を抑えつつ外観を整える手段としてアクリル塗料が適しています。
バリエーションが豊富
アクリル塗料はカラーバリエーションが豊富で、発色が良い点も大きな特徴です。
アクリル塗料は古くから使われており、その歴史の長さから各メーカーが多種多様な塗料を提供しています。そのため、好みや目的に応じたカラー選びがしやすく、多くの選択肢から理想的な色を見つけられます。カラフルな仕上がりを求める場面でも、アクリル塗料は有力な選択です。
使いやすい
さらに、アクリル塗料は使いやすい点も特徴的です。
多くのアクリル塗料は1液型で、DIY初心者でも手軽に扱える塗料です。そのため、プロに依頼せずに自分で塗装作業を行う人にとっても親しみやすい選択です。とくに、既存の塗膜がアクリル塗料であれば、シーラーを使わずに直接重ね塗りができる場合があります。
これにより、手間をかけずに塗装作業を完了させることが可能です。ただし、塗膜が劣化している場合は適切な処置が必要です。
アクリル塗料のデメリット
次に、アクリル塗料のデメリットについて詳しく解説します。
紫外線に弱い
アクリル塗料は紫外線を浴びることでラジカルと呼ばれる劣化因子が発生しやすくなり、その結果塗料の組織が破壊されてしまいます。
この劣化は時間の経過とともに進行し、数年で塗膜の光沢が失われ、色あせや変色が目立つようになります。さらに劣化が進むと、塗料本来の保護機能や美観を保てなくなり、再塗装の必要が出てきます。
ひび割れが起きやすい
アクリル塗料の塗膜は硬く、ひび割れが起きやすいという問題があります。
一般的にアクリル樹脂は常温で硬くなりがちで、この硬さを改善するために可塑剤が添加されています。しかし、可塑剤は紫外線によって徐々に抜けていき、3〜5年程度で塗膜の柔軟性が失われてしまうのです。
この可塑剤の減少によって塗膜が脆くなり、ひび割れが発生しやすくなります。ひび割れが生じるとそこから水分が浸透し、外壁全体の劣化を加速させます。
塗り替えサイクルが短い
さらに、塗り替えサイクルが短い点もデメリットです。
耐用年数が5〜7年程度と比較的短く、頻繁な塗り替えが必要になります。初期費用は安価であるものの、塗り替えの回数が多くなるため、長期的な観点で見るとコストが高くつく可能性があります。
そのため、長期間にわたって外壁のメンテナンスを考えている場合は、アクリル塗料での塗装を一考する必要があります。
他の塗料の特徴を紹介
塗料を選ぶ際は、樹脂の種類による特徴や耐用年数、価格を比較することが大切です。
以下に、ウレタン塗料、シリコン塗料、フッ素塗料、無機塗料のそれぞれの特徴を紹介します。
ウレタン塗料
ウレタン塗料はウレタン樹脂を主成分とする塗料で、密着性や弾性に優れています。
かつては外壁塗装の主流でしたが、現在はシリコン塗料の普及によりやや人気を落としました。しかし、今でも特定の用途や目的によって採用される塗料です。耐用年数は8年〜10年程度、費用は1,800〜2,200円/㎡と手頃な価格です。
また、ウレタン防水としてもよく使用され、特に形状が複雑な場所や施工しにくい場所に向いています。
シリコン塗料
シリコン塗料はアクリルシリコン樹脂を主成分とした塗料で、現在最も普及している外壁塗装用塗料です。
価格のわりに耐久性やコストパフォーマンスが高いため、住宅から商業施設まで幅広く採用されています。耐用年数は10年〜15年程度、費用は2,500〜3,200円/㎡です。性能と価格のバランスが取れているため、多くの人に選ばれています。
フッ素塗料
フッ素塗料はフッ素樹脂を主成分としており、耐久性が非常に高いです。
耐用年数は15年〜20年と長く、高級グレードに位置付けられています。これにより、長期的にメンテナンスを減らしたい場合や、重要な建物に適しています。ただし、費用が3,500~4,500円/㎡と高いため、一般住宅ではまだ普及していません。
無機塗料
無機塗料は鉱物などの無機物を配合した塗料で、非常に高い耐久性を持つハイブリッド塗料です。
100%無機物では塗料として使用できないため、合成樹脂にセラミックなどを配合しています。主成分となる樹脂の種類によって耐用年数は異なりますが、フッ素樹脂を配合した無機塗料の場合、耐用年数は18年〜22年と長くなっています。
価格は3,560円/㎡〜とフッ素塗料と同等かそれ以上です。そのため、品質にこだわる人に選ばれています。
まとめ
アクリル塗料は、リーズナブルな価格と豊富なカラーバリエーションが魅力の塗料です。一方、紫外線に弱いため耐久性が低いため塗り替えが頻繁に必要になります。その他の塗料として、ウレタン塗料やシリコン塗料はコストと耐用年数のバランスが良く、フッ素塗料や無機塗料は高い耐久性を持つため、長期的にメンテナンスを抑えたい場合に適しています。外壁塗装をする際は、使用目的やメンテナンス計画を踏まえた塗料選びが大切です。